鍼灸院・整体院・接骨院のマーケティングは、飲食店や物販とも、同じ医療系である歯科医院とも、戦い方が違います。 理由は商圏が徒歩5〜10分と極端に狭いことにあります。 この条件下では、やるべきことの数は多くありません。むしろ順番を間違えることのほうが、はるかに大きな損失になります。 このページでは、何から手をつけ、どの数字を見て、いつ次へ進むのかを一通り整理します。
この記事でわかること
- 治療院の集患を4つの段階に分解する方法と、段階ごとの打ち手
- Googleマップ・ホームページ・広告・SNSの正しい優先順位と、その理由
- 広告をいつ始めてよいか、まだ早いのはどういう状態か
- 院長が毎月見るべき数字(多くても5つで足ります)
- あはき法・柔道整復師法の広告制約と、規制に強い書き方
- やらなくてよいこと
1 結論:集患は4段階に分解し、上流から直す
治療院の集患は、次の4段階に分けて考えます。
- 見つかる(地図・検索に出ているか)
- 選ばれる(他院と比べられて勝てるか)
- 予約できる(連絡する段階で落ちていないか)
- 続けて来てもらう(1回で終わっていないか)
必ず上から順に直します。段階1が欠けている院が段階4に手をつけても、そこに流れてくる人がいないので何も起きません。
新患が減った院の多くは、まずホームページの作り直しを検討します。ですが、ホームページは段階2にあたります。 段階1で落ちていれば、新しいホームページも誰にも見られません。 費用をかけた施策が空振りする原因の大半は、この順番の取り違えです。
2 前提:商圏が狭い業種は、戦い方そのものが違う
「SEOで上位を取りましょう」「SNSでファンを増やしましょう」といった一般的なWEBマーケティングの話は、 広い商圏を前提にしています。全国から集客するECサイトや、県単位で集客する業種の話です。
治療院はまったく違います。この違いが、優先順位を決めます。
| 広い商圏の業種 | 治療院 | |
|---|---|---|
| 競合の数 | 全国。数千〜数万 | 半径1km内。数院〜数十院 |
| 勝つのに必要な記事数 | 数百本 | ほぼ不要 |
| 最大の流入元 | 検索エンジン | Googleマップ |
| SNSの役割 | 認知の獲得 | 既存の方との関係維持 |
| 成果が出るまで | 半年〜1年 | 1〜3ヶ月 |
これは治療院にとって有利な条件です。戦う相手が近所の数院に限られるので、 費用をかけずにできることだけでも順位が動きます。逆に言えば、やることの多さで差がつく業種ではありません。
業態ごとに、前提も打ち手も変わります。ご自身の業態のページもあわせてご覧ください。
接骨院・整骨院の方へ 接骨院のマーケティング|保険から自費へ移す院が、WEBで最初に変える場所 鍼灸院の方へ 鍼灸院のマーケティング|商圏が広い業態は「読んで納得してから来る」 整体院・カイロの方へ 整体院のマーケティング|資格で示せない業態は、何で信頼を作るのか3 段階1|見つかる(Googleマップ)
治療院を探す人の多くは、地図アプリで「接骨院 近く」「整体 今日」のように探して、そのまま電話をかけます。 ホームページは、そのあと「本当にここでいいか」を確かめるために見られます。 つまりGoogleビジネスプロフィールが、実質的なトップページです。
まず確認する3つの数字
- 表示回数
地図や検索結果に何回出たか。「見つかっているか」の数字です。
- ルートのリクエスト
経路案内を押された回数。実際に行こうと考えた人に最も近い数字です。
- 通話
プロフィールから電話をかけた回数。予約の一歩手前です。
この3つを直近3ヶ月と前年の同じ3ヶ月で比較します。 治療院には季節変動があるため、先月と今月を比べても判断できません。
くわしくはこちら 整骨院の新患が減ったとき、最初に見るのはホームページではなくGoogleマップです費用をかけずに効く3つ
- 写真を10枚以上に増やす
外観・入口・受付・施術スペース、そして施術者ご本人。治療院は「誰に体を触られるか」の不安が大きい業種です。院長の顔写真は、他のどの写真より効きます。
- 口コミにすべて返信する
過去の分にさかのぼって構いません。同じ星の数でも、返信のある院とない院では受け取られ方が変わります。読んでいるのは投稿者ではなく、次の患者さんです。
- 院名・営業時間・カテゴリを正確に保つ
特に院名に語を足さないこと。「◯◯接骨院 腰痛専門」のような登録は、プロフィール停止の原因になります。
口コミを集めるときの注意
お願いすること自体は問題ありませんが、割引や金券など対価と引き換えに口コミを集めることは避けてください。景品表示法のいわゆるステマ規制や、各プラットフォームの規約に触れる可能性があります。施術直後に、口頭で、お一人にお願いする。これがもっとも自然で、結果的にいちばん集まります。
4 段階2|選ばれる(ホームページ)
ここで多くの院がつまずくのは、ホームページの「見た目」ではなく「書き方」です。 デザインが古いことより、書いてある内容がずれていることのほうが影響します。
症状名で書かない
施術者の側は、正確に書こうとして症状名や病名を並べます。ところが患者さんは、 自分の症状の名前を知らないまま探していることがほとんどです。
| ✕ よくある書き方 | ○ 患者さんの言葉 |
|---|---|
| 腰椎椎間板ヘルニア | 朝、靴下を履くときにつらい |
| 頸肩腕症候群 | デスクワークの午後に首が重くなる |
| 坐骨神経痛 | 電車で30分座ると足がしびれてくる |
| 産後骨盤矯正 | 抱っこのたびに腰が抜けそうになる |
この書き換えは、検索にも広告規制にも同時に効きます。 症状名は競合が強く、かつ効果を断定する表現に近づきやすい。生活場面の言葉は競合が少なく、規制からも遠い。 どちらの観点でも有利になります。
選ばれるために必要な3つの情報
この3つが揃っていない院は、比較で負けます
- 料金(初回◯分◯円まで明記。書いていない院は候補から外されます)
- 施術者が誰か(顔写真・経歴・保有資格)
- 当日の流れ(初めての人が何をされるか分からないのは不安です)
デザインの刷新より、この3つを足すほうが先です。10年前の作りでも、この3つがあれば機能します。
5 段階3|予約できる(導線とフォーム)
ここはもっとも見落とされ、もっとも簡単に直る段階です。 見つかって、選ばれているのに、最後の一歩で落ちている院が少なくありません。
スマホで自院のサイトを開いて確認してください
- スクロールせずに、予約手段(電話・WEB予約・LINE)が見える
- 電話番号がタップで発信できる(画像になっていない)
- 予約完了まで3タップ以内
- 営業時間と定休日がすぐ分かる
- 予約フォームの入力項目が10個を超えていない
電話番号を画像で載せている院は今も多くあります。タップできないだけで、その場での予約はかなり失われます。
フォームの項目数も影響します。院内としては必要な情報でも、初回の予約時点で聞く必要があるとは限りません。 「予約時点で本当に必要な情報」と「来院してから聞けばよい情報」を分けるだけで、完了率は変わります。
そして、電話が取れているか
ルートのリクエストも通話数も減っていないのに新患が増えない場合、 施術中に鳴った電話が原因のことがあります。留守番電話の設定と、折り返しの運用を一度確認してみてください。 ここは施策ではなく院内の運用の問題ですが、影響は小さくありません。
6 段階4|続けて来てもらう(LINE・予約枠)
治療院は来院間隔が1〜2週間と短い業種です。歯科医院のメンテナンス(3〜6ヶ月に1回)と比べると、 接触の機会が桁違いに多い。これは新患を増やすより、いま来ている方の離脱を止めるほうが安上がりだということを意味します。
新患1人の獲得に1万円かかるなら、離脱を月2人止めることは、月2万円の広告費と同じ価値があります。
そして離脱を止めるほうが、確実で、早く、費用がかかりません。
止められる取りこぼしは4つ
- 無断キャンセル
前日のリマインド1通で大きく減ります。変更の連絡先を同じ文面に書いておくのが要点です。
- 施術後の自然消滅
3日後に「その後いかがですか」と聞くだけ。返信が来た時点で離脱はほぼ止まります。
- 通院の中断
最終来院から一定日数で案内を送る。症状が落ち着いた方ほど静かに消えます。
- 空いた予約枠
当日キャンセルで空いた枠を、その枠を待っている方にだけ知らせる。
1日20枠 × 25日 = 月500枠。当日キャンセル率5%なら月25枠が空きます。
自費6,000円として月15万円分。3割を埋め戻せれば月4.5万円の回復です。
全員に一斉配信しないこと
空き枠のお知らせを登録者全員に送ると、ブロック率が跳ね上がり、LINEという資産そのものを失います。「空き枠のお知らせを受け取る」に自分で手を挙げた方にだけ届く仕組みにしてください。素人運用との差が最も出るのがここです。
7 広告をいつ始めるか
広告は足りない集客を足すものではありません。すでに機能している導線に人を流すものです。 受け皿ができていない状態で出すと、クリックだけが増えて予約は増えません。
出してよい院:スマホで予約手段が見えていて、料金が明記され、Googleマップの写真と口コミが整っている。
まだ早い院:上のどれかが欠けている。まず費用のかからない段階1〜3を直すほうが、同じ金額で得られる新患が多くなります。
出稿額の目安は月3万円以上です。それ未満だとデータが溜まらず、 どのキーワードが効いているのかを判断できません。判断できないまま出し続けるのは、広告ではなく寄付に近くなります。
SNS広告で最も多い不承認の理由
治療院がMeta広告(Facebook・Instagram)を出すとき、施術前後の比較画像は明確に禁止されています。「あなたの腰痛、まだ治っていませんか?」のように個人の状態を断定する表現も通りません。そして不承認になるのは広告文ではなく着地ページ側のことが多いため、広告だけ書き直しても通りません。
8 毎月見る数字は5つで足ります
数字は増やすほど見なくなります。院長が毎月確認するのは、次の5つで十分です。
| 段階 | 見る数字 | どこで見るか |
|---|---|---|
| 見つかる | 表示回数 | Googleビジネスプロフィール |
| 選ばれる | ルートのリクエスト | 同上 |
| 予約できる | 新患数 | 院内の記録 |
| 予約できる | 新患が「どこで知ったか」の内訳 | 問診票 |
| 続けて来る | 稼働率と当日キャンセル数 | 予約台帳 |
このうち「どこで知ったか」を聞いていない院が非常に多いのが実情です。 これがないと、以降の判断がすべて勘になります。問診票に1行足すだけで、翌月から実データが手に入ります。 費用はゼロで、効果はどの施策よりも長く効きます。
逆に、判断に使わなくてよい数字もあります。ホームページのアクセス数、SNSのフォロワー数、投稿の表示回数。 記録しておくのは構いませんが、これらが増えても予約が増えていなければ意味がありません。
9 広告表現の制約と、規制に強い書き方
鍼灸・あん摩マッサージ指圧は「あはき法」、柔道整復は「柔道整復師法」により、 広告できる事項が法令で限定的に列挙されています。 医科・歯科の医療広告ガイドラインのような「条件を満たせば書ける」という仕組みがなく、この点では治療院のほうが厳しい構造です。
ホームページの扱いについては、従来「患者が自ら求めて閲覧するもの」として広告とは区別する整理がされてきましたが、 この扱いは議論が続いており、今後変わる可能性があります。
「今はグレーだから書ける」を前提に作らないでください。
規制が入っても書き直さなくていい構成で作る。症状名や効果ではなく、患者さんの生活の場面と、施術の内容・流れで書く。これなら規制にも検索にも同時に強くなります。
避けたほうがよい表現
「治る」「改善します」といった断定的な表現、施術前後の比較写真、「地域No.1」「満足度◯%」などの表示。医療機関と誤認させる名称(クリニック・医院・診療所)も避けてください。判断に迷う場合は、所轄の保健所にご確認ください。
10 やらなくてよいこと
- ブログの毎日更新
商圏が狭い業種では、記事数で勝負する必要がありません。それより施術メニューごとのページを1本ずつ丁寧に作るほうが効きます。
- SNSの毎日投稿
続かない仕組みは、始めないほうがましです。週1〜2回で十分ですし、そもそもSNSは新患獲得より既存の方との関係維持に効きます。
- フォロワー数を追うこと
増えても予約が増えなければ意味がありません。見るならプロフィールのリンクが押された回数です。
- ポータルサイトの即時解約
止めたくなる気持ちは分かりますが、順番が逆です。まず自院サイトとGoogleマップ経由の予約が月に何件あるかを把握してから、段階的に減らします。
11 よくあるご質問
ホームページとGoogleマップ、どちらから手をつけるべきですか。
Googleマップです。費用がかからず、着手から反映までが早く、治療院では最大の流入源だからです。写真と口コミ返信を整えるだけなら、その日のうちに終わります。ホームページの作り直しは、そのあとで判断しても遅くありません。
ホームページは何年で作り直すべきですか。
年数では判断できません。スマホで予約手段が見えていて、料金が明記され、表示が遅くなければ、10年前の作りでも機能していることがあります。逆に、作って2年でも予約導線がなければ直す価値があります。年数ではなく、予約まで進めるかどうかで判断してください。
競合が増えて、口コミ数でも負けています。
口コミの総数は一朝一夕には逆転できません。ただし返信の有無、写真の枚数、施術者の顔が見えるかは今日から変えられます。星の数が同じなら、返信のある院のほうが選ばれます。また商圏が狭いため、競合すべてに勝つ必要はありません。徒歩圏の数院の中で選ばれれば足ります。
成果が出るまでどのくらいかかりますか。
Googleマップの整備は1〜2ヶ月で数字が動き始めます。ホームページの書き換えは3〜4ヶ月ほどかかることが多く、これは検索での評価が変わるまでの時間です。一方、LINEでの離脱防止は翌月から効きます。着手する順番によって、成果が見える時期が変わります。
12 まとめ
- 4段階に分解し、上流から直す
見つかる → 選ばれる → 予約できる → 続けて来てもらう。順番を飛ばすと、正しい施策でも成果が出ません。
- 商圏が狭いことは有利な条件
戦う相手は近所の数院です。費用をかけずにできることだけでも順位が動きます。
- 見る数字は5つで足りる
特に「どこで知ったか」を聞いていない院は、そこから始めてください。費用ゼロで、最も長く効きます。
サービス開始にあたり、院長先生の集客のお悩みを無料で相談できます。HP・検索・SNSの課題を整理し、優先する施策と具体的な改善案をご提案します。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、施術の効果を示すものではありません。
※広告表現に関する法令解釈は、所轄の保健所等にご確認ください。
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